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扉の向こう側 INDEX [小説:扉の向こう側]

  扉の向こう側            小島 澪

― 目次 ―
現在(1) 2006年1月4日
過去(1) 2005年10月13日
過去(2) 2005年9月17日
過去(3) 2003年3月15日
過去(4) 2002年6月12日
過去(5) 2000年12月31日
過去(6) 2000年2月3日
現在(2) 2006年1月4日
過去(8) 2005年10月16日
過去(9) 2005年12月31日
過去(10) 2006年1月1日
未来 2006年9月17日
10年前 1996年9月17日

※目次の通し番号順でも、時系列でも、最後からでも、お好みの順番でお読みください。


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扉の向こう側 未来 2006年9月17日 [小説:扉の向こう側]

 今、ここにこうしているのは、たくさんの過去の結果だ。
 全てのことはきちんとつながっている。
 ふと思うこと。何気なくすること。落ち込むこと。笑うこと。失敗や成功。誰かの言葉。一見何の意味もないことにも、実はちゃんと意味がある。見えないところでつながって、結果が出る。
 もし一つでも開く扉が違っていたら、少しでもタイミングが違っていたら、今とは違う人生を生きていたはずだ。
 私はそれを知っている。
 だから、今、この瞬間を大切にしたい。ここからまたつながっていく明日のために。

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扉の向こう側 現在(2) 2006年1月4日 [小説:扉の向こう側]

 先日、偶然見たテレビ番組で、村上さんが海外小説の翻訳をして活躍していることを知った。
 去年ベストセラーになった本の翻訳者としてドキュメンタリー番組に取り上げられ、目を輝かせて本当に楽しそうにインタビューに答えていた。
 会社を辞めて、オーロラを見に行って、それから翻訳の仕事で成功する。そんな風に、私には思いも寄らない選択をぽーんとやってのけてしまう人もいる。
 今になってみれば、その村上さんとあの時話したことが全てのきっかけだったんだろうと思う。
 あれから少しずつ少しずつ、私はちゃんと自分の意志で今の生き方を選んできたのだ。三十年生きて、やっと人生の流れが見えてきたような気がする。
 私は熱い紅茶を入れて、再び日記を置いたテーブルの前に座った。
 日記は、二〇〇五年十月十三日で終わっている。
 その後二ヵ月の間に起こったことを、記録しておこう。
 いつかまたこうして過去の扉を振り返ることができるように。


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扉の向こう側 現在(1) 2006年1月4日 [小説:扉の向こう側]

 ドアを開けたら、そこは違う世界だった。
 ……ということが起こらないかな、といつも考えていた。
 生まれてから何千回、何億回とドアを開けてきたんだろう。
 アパート、お風呂、トイレ、エレベーター、電車、オフィス、会議室、銀行、コンビニ……あらゆるドアの向こうはいつも思ったとおりの状態で、思ったとおりの事しか起こらない。
 家のドアを開けたら火の海だった、とか、強盗がいた、とか、サプライズどころか命に関わるようなことに遭遇しないだけ幸せと思うべきだろうけど。
 ドラえもんの便利グッズで一番欲しい物は、子どもの時から『どこでもドア』だった。
 ドアを開けたら行きたい所に行ける。簡単に行けないところにも、家のトイレに入るみたいにひょいっと気軽に辿り着ける。それが私にはたまらなく魅力的に見えた。
 以前の私は、世の中の全てのことに退屈してしまっていた。ドアを開ける時にはいつも、予想を裏切る何か、人生を変えてしまうような何か、が起こることを期待していた。
 毎日同じ時間に起きて、同じ電車の同じ車両に乗って、会社でその日の仕事を片付けて、ゴハンを食べて、テレビを見て、寝る。週末が来て、ぼんやりしている間に、また月曜日がやってくる。――そのサイクルが完成されていて、メビウスの輪のようにつながっている。
 そこからなんとか抜け出してみたいと思う、ただそれだけ。
 そう、ただ変化を期待するだけで、そこにある事実に気付いていなかった。自分から変化を起こそうともしていなかった。
 でも今は、ただの期待ではなく、確信している。
 扉の向こうではいつだって新しい出来事、未来につながる何かが待っているってことを。
 そこにあるきっかけに気付いて、心に思うだけじゃなく行動しなくては何もはじまらないということを。
 ここに、5冊の日記がある。学生の頃から気まぐれに書き綴ってきた過去の記録だ。
 毎日欠かさず書いたものではないから、日記、という言葉はまったく相応しくない。10年間で3冊という事実がいかに私が怠け者かを示している。
 そうは言っても、この中に、今日にたどり着くまでの道筋が残されているのには違いない。
 これから次の新しい扉を開く前に、今につながっている過去の扉を探してみようと思う。


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扉の向こう側 過去(10) 2006年1月1日 [小説:扉の向こう側]

 まだ、家を出る時に心に決めたことを言い出せないままだ。
 年が明けるその前に、と思っていたのに。ドアを開けるまでにさんざん迷って決めたのに。
 守屋さんと二人で明治神宮に初詣にやってきた。
 いつものようにお蕎麦だけで終わらないで済んだ。今夜は大晦日だから。
 それなのに、ダメな私。
「パパ……ううぇ」
 私は小さな女の子を両腕に抱えて、前を通り過ぎる人の波を目で追いながら、途方に暮れた。
 同じように食い入るように列を見つめる女の子の目は洪水状態。壊れた水道の蛇口みたいに涙がどんどん頬に溢れ出す。指を口の中に突っ込んで体を震わせている。
「ねえ、お母さんたち、いない? 見えない?」
「いないー。うっうっ」
 何を聞いても彼女は泣くばかり。
 私も泣きたい。
 十二時が過ぎて参拝がはじまり、お賽銭箱までたどり着いて手を合わせた直後。人の波が押し寄せてきてその中でもがいているうちに、いつの間にか守屋さんとはぐれてしまっていた。
 携帯は、回線が混み合っていてつながらない。その上、同じように迷子になった子どもが私の手を離さず、この場を離れることもできなくなった。
 私の人生なんて、こんなものなのかも。今日こそ、と思った時に限って、うまくいかない。
 私はそっとため息をついた。
 わかってる。今日こそ、というタイミング自体が遅いんだ。
 目の前を通り過ぎるチャンスをぼんやり見送って、手を伸ばそうと思った時にはもう遠いところに行ってしまって届かない。その繰り返し。『あの時こうしたら』って何度も後悔してばかり。情けない。
 女の子の背中をさすりながら呆然と突っ立っていると、向こうから今にも泣き出しそうな顔の女の人が転げるようにして駆け寄ってきた。
「カナちゃん!」
 目の前の泣き顔と瓜二つだ。
「ママ! パパ!」
 女の子がしゃくりあげながら両手を伸ばす。
 待ち人、来たる。
 ほっとした。
「ごめんね、カナちゃん。ごめんね」
「どうもすみません。ありがとうございます」
 お父さんらしい男の人が長い両腕で女の子の体を受け取り、しっかり抱きしめた。
 二人は丁寧に何度も頭を下げて、その場を立ち去っていった。
 仲良く体を寄せ合いながら遠ざかる家族の後姿を一人で見送ると、何とも言えず淋しい気持ちになった。
 あの人とならいつかあんな家庭を築けるかもしれない、って割とリアルに想像できてたんだけどな。
 また、遠い夢になってしまった。やっぱり私にはそういう現実は訪れないのかもしれない。
 冬の夜風がやけに身に染みる。
 もう帰ろうか。きっと、守屋さんも家に向かったに違いない。
「こんなとこにいた」
 駅の方に足を向けようと決めた時、ぽんと頭の上に大きなものが乗っかるのを感じて、顔を上げた。
「どこ行ったかと思った。迷子の放送まで考えたよ。見つかってよかった」
 守屋さんが、ほっとした顔で笑っていた。
 今度こそ本当に涙がこぼれそうになった。
 私を、探してくれていた。まだ帰ってなかったんだ。
「私、ついていってもいい?」
 泣き出す代わりに、あきらめかけてた言葉が思わず口をついて出た。
 頭の上に置かれた温かい掌が余計な不安や心配を全て溶かしてしまったのかもしれない。
 首をかしげ何のことか問いかける守屋さんの目をまっすぐに見る。
「先のことなんか約束しなくていい。掃除でもベッドメイキングでもウェイトレスでもなんでもやって自分の生活くらい自分でなんとかする。このまま何事もなかったみたいに終わらせたくない。だから、傍にいてもいいですか」
 自分でも信じられないくらい、すごい勢いで言いたいことを一気に話した。
 これが最後のチャンスだ。
 きっと今を逃したら、もう二度と言い出せない。今日別れたら、それきり。この人は二度と私を探してはくれないだろう。『もしかしたらあの時』って思いながら一生を終えるのは嫌だ。
 全てさらけ出した後。
「まいったな」
 守屋さんがいかにも困った顔を見せたので、そのまま腰が抜けそうになった。
 私たちの間に通い合う気持ちがある、なんて思ったのは、勘違い? ただの、自惚れ?
 膝が小さく震え出す。この場から一刻も早く逃げ出したくなる。
 私が既に絶望しかけていることを知ってか知らずか、守屋さんの動作の一つ一つは恐ろしくゆったりとしていた。ダメならダメで一刻も早く一思いに斬り捨ててほしい、と思うのに。
 守屋さんは両手をダウンジャケットのポケットに突っ込んで、顎を上に向けて天を仰いだ。ふうーっと長く白い息を吐き出した後、再び私の顔を見た。その目は真剣で、冗談を言うようには見えず、これから告げる言葉がいいことなのか悪いことなのかも予測がつかない。
 そしてポケットから出した左手で私の右手をつかんで、一言一言、噛みしめるように言う。
「アメリカで成功する保証はない。失敗して全て失うかもしれない。今まで日本でやってきたことがそのまま向こうで通用すると思ってないし、ある意味本当にゼロからのスタートだと覚悟している。仕事の実績も、財産も、何もない状態。それでも、一緒について来てくれる?」
 はい、と迷わず頷いた私に、彼もまた一つ頷く。
「先に言わせるつもりじゃなかったんだけどなぁ」
 守屋さんは残念そうにそう言って、私の手をつかんだまま、その手を無造作にジャケットのポケットに押し込んだ。
「冷えたね。どっかでコーヒーでも飲もうか」
「うん」
 一緒に、ゆったりと歩き出した。
 温かい手だった。
 私は、二度とはぐれないように、その手をぎゅっと握りしめた。
 家を出る時あれこれ悩んだことが嘘のようにあっさりと決着がついたので、ちょっと信じられない。でも、今ここにある温もりと感触が実感として現実だと教えてくれる。
 一歩足を踏み出す度に砂利がざくっという音が響く。道をはさんで向こう側に並ぶ屋台の賑わいが遠く聞こえる。
 彼も、私も、黙っていた。
 彼が今何を思っているのかは知らない。知らないけど、根底で私の思うこととちゃんとつながっている気がした。
 冷え切った夜空に、オリオン座を見つけた。真ん中の三つの星が、きらきらしていた。
 さっきの女の子、もう寝ちゃったかな。泣き疲れて、お父さんの腕の中で。
 迷子になってもちゃんと迎えに来てくれる人がいる。それって、とても幸せなことだ。
 少し前に神様の前で手を合わせた時と同じことを改めて心の中で強く願った。今年最初の祈りが長く効力を発揮するように。
 この人と、ずっと一緒にいたいです。


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扉の向こう側 過去(9) 2005年12月31日 [小説:扉の向こう側]

 コートを着て、玄関に座り込んでブーツまで履いておきながら、まだ迷っていた。
 何の特技も資格も免許もない私が、建築模型を作るという仕事を見つけることができた。
 社内で専任で任されているとは言っても絶えず仕事があるわけではないし、独立してやっていけるほど大層な腕前ではない。だけど、自分の思うように何かを作るのは、楽しい。一応、手に職を付けたと言えると思う。まだ今でも中西さんから一発OKをもらえる確率は低いし、これからも修行が必要だけど。
 この決断次第で私の人生が変わるのは、間違いない。
 今までどおりの生活を望むなら、このまま何もしなければいいだけだ。平日にはオフィスに行って、模型を作ったり谷さんの仕事を手伝わせてもらう、そんな毎日を続けられる。
 だけどもし変化を望めば、今の会社は辞めることになる。かなりリスクは高い。全てを失い、手元に何も残らないということもあるだろう。
 どっちが幸せかなんて、わからない。
 未来に保証なんかない。結果的にどっちがいいのかなんて、誰にもわからない。どうなるか考えたって、なるようにしかならない。目の前にあるのは、今、この瞬間にどうするのか、ということだけ。
 だから迷う。踏み出すには勇気が必要だ。

 この決断へのカウントダウンはとっくに始まっていた。
 ビザも無事取得して、渡航準備は整っている。一月十日、十七時、成田発サンフランシスコ行の飛行機で、守屋さんは日本を離れる。
 私たちは今日までに七回、一緒に食事をした。適当な社交辞令ではなく、ちゃんと”今度”がやってきたわけだけど、本当にそれだけ。見事なくらい食事だけが目的だ。
 待ち合わせをして、おいしいものを食べて、駅で別れる。メニューも、焼肉、タイ料理、鶏の水炊き、お好み焼き、etc。先週なんて、クリスマスだったと言うのに、すき焼きだった。色気より食い気の、安全な選択。
 今夜は、年越し蕎麦。なんとなく、守屋さんは今日が最後のつもりなんだろうと思う。
 正月が明けたらすぐの出発。きっと最後の準備や挨拶で忙しいことだろう。
 私は、ただ偶然が重なった上に期間が限定されているからという理由だけでこの出会いに運命のようなものを感じてはいけないと思っていた。巡り合わせが悪かったと考えた方がいい、と納得しようと努力してきた。
 でも、努力って一体、何のための努力なんだろう、と昨日になって気付いた。
 日を追うごとに一緒に過ごせる時間は減っていき、決して増えることはない。最初の頃のようにただ楽しいだけの時間じゃなくなってきた。駅で行き先の違う電車に別れて乗る度に、どーんと落ち込む。
 努力というのは、先に何か明るいものが見えるからできることじゃないのか。
 落ち込むためにする努力って、一体誰の為に、どんな未来のためにしているんだろう。


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扉の向こう側 過去(8) 2005年10月16日 [小説:扉の向こう側]

 初めて守屋さんの顔と名前が一致した日。中西さんとの話が終わって帰る守屋さんをエレベーターまで送った時、
「最近手がけたレストランが今週オープンして、クライアントが招待してくれるって言ってんだけど、よかったら週末にでも一緒にどう? 男一人じゃ行きにくいから」
とさらっと食事に誘われた。
 少しは期待しちゃったりもしたけど。本当に言葉どおり、一人で行きにくかっただけらしい。
 次の日曜日の夜、代々木駅で待ち合わせて、守屋さんが内装の設計を担当したイタリアンレストランに連れて行ってもらった。
 無愛想でいかにも頑固に自分のこだわりを押し通しそうな職人タイプのご主人と陽気で気の利く奥さんが二人でやっているお店だった。五十を前にようやく手に入れたお店であることを、奥さんがうれしそうに教えてくれた。
 白い漆喰の壁と、三種類のサイズの素焼き風の淡いブラウンの磁器タイルを組み合わせて敷き詰めた床。温かい色の間接照明と、楢の木の丸テーブルの上のキャンドルの灯り。昼間は開け放してオープンテラスにできる大きなガラスの扉。広いカウンターの向こうに見える煉瓦を積み上げたピザを焼くための釜とその炎とぴかぴかのキッチン。
 このご夫婦にぴったりの、家庭的な雰囲気のレストランだった。
 オープンしたばかりなのにきちんとどの席も埋まっていて、出だしは好調のようだった。だけど、カップルか家族連れしかいないので、確かに一人で食事するのは気が引ける。
 もちろんお料理はとてもおいしかった。ピザもパスタもたっぷりお腹に詰め込んで、デザートのパンナコッタまで堪能した。最後に届けられたカプチーノには泡でハートマークが描かれていて、あのご主人にもちゃんと遊び心があるんだな、と思うとちょっとおもしろかった。
 お店の奥さんのパワーの影響なのか、ワインで酔ったせいなのか、食事中はお互いに饒舌で、いろんな話をした。
 彼は福岡出身で就職するまでずっと九州にいた、ということ。中西さんは大学のバスケ部の先輩なのだということ。子どもの頃から科学者になろうと思っていたのに、どういうわけか気まぐれに受験した建築学科だけに合格して、建築家の道を選ぶことになってしまったこと。
 私は、東京で生まれ東京育ち。数学と理科が苦手で頭の中がまるきり文系。運動は苦手で部活動はまともにやったことがない。
 彼の知っている世界は私の知らない世界で、逆もまた然り。筋道を立てて論理的に話す彼と、思いついたことから言葉にする感覚的な私は、ものの見方も考え方も、何もかもが違っていた。
 だから話していておもしろいと感じたのかもしれない。同じものを見ても互いに違う角度から意見を言うのが興味深かった。それに、おしゃべりの合間の沈黙も、居心地悪く感じなかった。話題が途切れないように頑張ってしゃべり続けなくてもいいというのは気が楽だ。

 お店を出た後、食べ過ぎて膨れたお腹を抱えて駅までゆっくりと歩く間は、食事中のことが嘘のように二人ともほとんど話さなかった。
 たぶん、考えていることは同じだったと思う。
 どんなに仲良くなっても、奇跡みたいに旅行先と職場で出会えたことをきっかけに恋をはじめてもいいなと思っても、タイムリミットが迫っている、ということ。それを無視して勢いで感情を盛り上げてしまうには勇気が必要な年だということ。
 この前、守屋さんが事務所に中西さんを訪ねてきた時、コーヒーを出しながら、私は彼の話を聞いてしまっていた。
 彼は、勤め先である橋本設計事務所を退職してサンフランシスコに移住することを報告し、その前の挨拶をするためにやってきたのだった。
 以前日本で行われたイベントで一緒に仕事をしたアメリカの企画会社の社長が、イベントだけではなく住宅やオフィス、公共施設の総合プロデュースを行う新規事業の立ち上げに際し、建築家として参加してほしいと声をかけてくれたのだそうだ。そもそも、九月にサンフランシスコに行ったのも、新しい職場や落ち着き先のアパートを見に行くためだった。
 日本を発つのは、二〇〇六年一月十日。もう、全て決まっている。
 駅の明かりが見えた時、守屋さんが口を開いた。
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそ、ごちそうさまでした」
「いや、あれはあのご夫婦のオゴリだから」
 丁寧に頭を下げると、彼は首を振って、それから頭をかいた。
「なんか、おれ結構つまんないこと話しちゃった気がするけど、楽しかった?」
「楽しかったです」
 私は大きく頷いた。
 本心から。ホントに楽しかった。もう少し話してみたい、って思うくらい。
 だけど、臆病者の私は、心にそっとブレーキをかけておく。
「もし、時間がうまく合ったら」
 改札口の手前で、ためらいがちに守屋さんが言った。
「また今度食事に行きましょう」
「はい。また、今度」
 私たちはそのまま改札をくぐったところで別れ、山手線の新宿方面と品川方面で別々の階段を登った。
 階段を登ると、ちょうど電車の扉が開いたところだった。乗り込んで振り返ると、閉まる扉のガラスの向こうにホームに立つ守屋さんの姿が見えた。
 手を振ってみようと思う間もなく、すぐに電車が滑り込んで来て、見えなくなってしまった。乗っている電車も、全く反対の方向へ向かって駅を離れはじめる。
 こうやってすれ違っていくだけなんだろうな、と思うと、とても残念だった。ちょっといい感じだったのに。
 また今度。大人になったら、これほどかなえられない言葉はない。


photo: :::AnytimeWoman:::[PhotoMaterial]


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扉の向こう側 過去(1) 2005年10月13日 [小説:扉の向こう側]

 久しぶりに朝から空はすっきり晴れ渡っていた。せっかくの三連休の天気が悪かったので、随分長いことこんな青空を見ていなかったような気がする。
 朝一番で、と頼まれていた模型を有楽町のお客様に届けに行った。
 こんな日の外出は散歩気分でそのまま逃亡したくなってしまうのだけど、月曜日が休みだった分短いウィークデイにそんなことをしたら週末出勤は免れない。陽のあたる日比谷公園に心惹かれながら、四谷の事務所に戻ってきた。
 前を歩く男性がガラスの扉を押し開けてビルの中に入った後、扉を押さえたまま後から来る私を少し待ってくれていた。あわてて小走りになり、扉を引き受けて、すみません、と言いながらその顔を見上げた。
「あ」
 知っている顔だった。シルバーフレームのレンズの奥の目が、相手も私を知っていることをはっきりと物語っている。
 だけど確かに知っているはずなのに、すぐには誰だか思い出せない。
 それは相手も同じようだった。二人してバカみたいに口を開けたまま、数秒が過ぎた。
 先に男性の方が申し訳なさそうに切り出した。
「すみません。僕、物覚えが悪いみたいで。恐らくどこかでお会いしていると思うのですが、失念してしまいました。失礼ですがお名前を伺っても?」
「私、中西建築事務所の斉藤 鈴(すず)です。ごめんなさい。私もです。お名前教えていただいてもよろしいでしょうか」
 私は手元のバッグからあわてて名刺を取り出して相手に渡し、頭を下げた。もしかしたら大事なお客様だったかもしれない。後で中西さんに叱られそう。
「ああ、中西さんの……。僕は橋本設計の守屋です」
「守屋様! いつもお世話になっております」
 名刺にある名前と相手の声でハッキリ認識した。うちの事務所の手が足りない時、社長の中西さんが外注で設計をお願いしている方で、時々電話を取り次ぐことがある。聞きかじった話だと、どうやら中西さんの大学の後輩らしかった。
 でも、おかしい。名刺をいただくのは初めてだし、事務所で会った記憶はまったくないのだ。
 シンプルな白い名刺には、橋本設計事務所、一級建築士、守屋孝弘、とあった。
 やっぱり記憶にない。この名前が顔の記憶とまったく結びつかないのだ。
 若年性アルツハイマーかもしれない。いやだなあ。病院行った方がいい?
「中西とお約束ですか? どうぞこちらに」
 かなり長いことその場に立たせたままだということに気付いて、私はあわてて彼をエレベーターの前に案内した。
 ボタンを押すとすぐに扉がゆっくりと開いた。
 その時、実際には扉が開いていく様子を目で見ていながら、頭の中では、映画のフラッシュバックみたいに瞬間的に蘇った記憶を再生していた。
 エレベーターの中。眼鏡。扉が開いて、外に出る。
 思わず守屋さんの顔を見上げた。
 そうだったんだ……。道理で記憶が一致しないはずだ。
 守屋さんも同じように思い至ったらしく、おもしろがる様子で静かに笑っていた。
 その笑い方を見て確信した。
 ああ、この人だ。やっぱり、間違いない。
「ふふっ」
 なんだか急におかしくなって、私もつられて笑い出した。


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扉の向こう側 過去(2) 2005年9月17日 [小説:扉の向こう側]

 麻美と遅い夏休みをとってサンフランシスコにやってきた。
 二人ともサンフランシスコは初めてだったので、まずは街が見下ろせる見晴らしのいいところに行こう、ということになり、ユニオンスクエアから地下鉄とバスを使ってコイトタワーを目指した。
 コイトタワーは、ピサの斜塔のようなイメージの円柱の塔だった。バスでとてつもなく急な坂道を登って、どうにかたどり着いた。
「シドニーでもハーバーブリッジに登ったね。私たち、どこ行ってもまず高いところだね」
 麻美が売店で買ったチケットをひらひら振りながら笑った。
 シドニーは大学最後の夏休みに旅した場所。もう九年も前の話だ。
「高いところから大事なポイントを押さえておかなくちゃ」
「そう、それが大事」
 エレベーターを待つ間に、私たちの後ろには少しずつ人が集まり、列ができていた。
 ようやく扉が開いて、上から降りてきた人たちを全員出した後、オペレーターのおじさんが手元のチケットにパンチを入れながら中に通してくれた。
 小さな小部屋はすぐに満員になり、オペレーターが手で扉を閉めると、がたん、と一揺れしてゆっくり上昇を始めた。
「皆さん、頂上に参ります。揺れると落ちる可能性があるのでどうぞ動かないで」
 オペレーターがそんなジョークを言う。
「あんまりジョークに聞こえないんだけど」
 麻美が苦笑して私に耳打ちした。
 同感。さっきからあまり感じたことのない振動を感じている。
「実はこのエレベーターは手動式になっていて、うちの女房が筋トレに使ってるんだよ。腕に自信があるんなら帰りに地下で試していきな。ボディビルダーになれるから」
 オペレーターの軽口に、運命共同体の乗客たちは思わず顔を見合わせて笑う。
 笑いながら、向かい合わせに立っていた男性と目が合った。
 黒い髪に、銀の細いフレームの眼鏡。淡いブルーのシャツ。同じ日本からの観光客だろう。年は私と同じか少し上くらいだろうか。
 口の端を上げて少し目を細める、穏やかな笑顔だった。

 最後にがたん、と一揺れして、エレベーターが止まった。
「足元に気をつけて」
 扉がまた手で押し開けられて、窮屈な部屋から一人、また一人と外に出て行く。
 最後は私と麻美。
 麻美より先に外に向かった私は、入り口の段差に片足を引っ掛けて前につんのめり、さっきの日本人男性の背中に頭から飛び込んでしまった。
「わっ」
「鈴!」
 咄嗟にオペレーターのお兄さんが腕をつかんでくれたのでそのままドミノ倒しにはならずに済んだけれど、あまりに間抜けすぎて顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
「がっはっはっは」
 オペレーターに大口を開けて笑われた。
 その場でエレベーターを待つ人の列からも笑い声が上がる。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
 私はぶつかってしまった相手に急いで頭を下げた。
「ぶつかったところ、痛くないですか?」
「うん、痛い。ひょっとして石頭?」
「えっ」
「冗談。そっちこそ怪我しなかった?」
「私は、おかげ様で大丈夫です」
「なら、よかった。道中気をつけて」
 男性は何事もなかったかのように軽く手を振って、先に狭い階段を上がっていった。
「気をつけろ、って言われたばっかでしょー」
 後ろから麻美がけらけら笑いながら、私の両肩に手をかけた。
「面目ない」
「鈴らしくて笑える」
 反省しながら階段を登りきると、意外なことに、天井にぽっかり開いた大きな穴から真っ青な空が見えた。
「へえー。ここ、オープンなんだねー」
 不思議と、空がこの建物の壁から一続きの半球みたいに見える。青いスクリーンを綿のように薄く白い雲が海風に乗ってどんどん通り過ぎていく様子がおもしろくて、ついそのまま見入ってしまう。
「こうやって見ると、プラネタリウムみたい」
「そうだね」
 麻美は私の言葉に頷きながら、首を横に向けて、
「あっ、ちょっと鈴、こっちだよ、メインは」
と上を見上げている私の手をぐいぐい引っ張った。
 引っ張られるままに目を向ければ、縦長のかまぼこ型に切り取られた窓から、サンフランシスコの風景が広がっていた。
「わー。すごい」
 我ながら月並みな表現しかできないのだけど、それ以外に出てくる言葉がなかった。
 きらきら光る海の上に点々と浮かぶヨットの三角の帆。アルカトラズ島。海沿いにずっと続いている港。
 ゴールデンゲートブリッジ。街の中心のビル群。
 バスでひたすら登ってきた急勾配の坂。その先のなだらかなうねり。一軒一軒違う色で塗られた家が並ぶパステルカラーの通り。その隙間にまっすぐに続く道を走っていく車、バス。
 一つ一つ、人間の手でこつこつ作り上げられてきたもの。
 なんだろう。このバランス。すごく、ひかれる。
 何枚か写真を撮ってみたけれど、写真なんかじゃ何も表現できないと思って途中で放棄してしまった。
「私、ここに住んでみたいなあー」
「何、急に」
 私の唐突な言葉に、麻美はデジカメのシャッターを押す指を止めて振り返った。
「ミニチュアでこの町を再現してみたい。建物の一つ一つを作って」
「あはは。そりゃ住まなきゃ無理だね。でも、どんだけ時間かかるの?」
「わかんない」
「それはライフワークだよ」
「そうだねー」
 本当にそうだ。いつになるかわからない話。そもそも次にいつここに来られるのかもわからない。
 でも、なんとなく、そんなに有り得ない話ではない気もした。根拠はなくても。


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扉の向こう側 過去(3) 2003年3月15日 [小説:扉の向こう側]

 誕生日だというのに休日出勤だなんて、泣ける。
 だけどこの仕事はどうしても今日中に仕上げなくてはならない。こればっかりは仕方がない。
 四月中旬から建替えをはじめる住宅の完成予定模型を作っている。明日、中西さんがお客様との打ち合わせに持っていく。
 細長く切ったスチレンボードにレンガのパターンのシートを切って、貼り合わせる。これを家の塀として使う。慎重にサイズが合っているか仕上がりつつある模型に当ててみる。
 単調な作業を何度も繰り返す。作業自体は地味だ。だけど、楽しい。
 この建築事務所に転職して二年目。最初は事務員として採用され、小さな事務所の中で経理と総務と人事を先輩格の谷さんと二人でこなしていた。それが、一年前に模型用のテーブルと椅子のミニチュアを作ったのをきっかけに、徐々に建築模型を作ることが私の仕事の半分を占めるようになった。人生、何がどう転ぶかわからない。こんなことでお金が稼げるなんて、考えたこともなかった。
 手を休めて窓の外に目を向けると、朝降っていた雪混じりの雨は止んだようだ。
 背中の方で加湿器がしゅーしゅー言いながら白い霧を吐いている。まだまだ寒い。春は遠い。
 だけど、1/50の世界では春ということにしておこう。
 昨日の帰りにちぎった綿にエアブラシを使ってピンク色のアクリル絵の具で色をつけておいた。割り箸をカットして茶色く塗ったものに太めのワイヤーを巻きつけていくつか枝を作る。そこに綿を巻いたり接着させて、満開の桜の木を仕上げていく。
 一月に撮った家の外装写真を確認する。ここに写っている桜は葉が落ちてしまっている。60代の男性と息子夫婦と1歳半の男の子。九月には赤ちゃんが生まれる。そんな家族の家。改築が終わるのは今年の6月だけど、来年の春、この家で見られるのは、こんな風景。
 日曜日。男の子は庭で自作の歌を歌いながら三輪車を走らせる。庭の草花の手入れをしているおじいちゃんが、時々男の子の問いかけに答える。家の中ではお昼寝から目を覚ました赤ちゃんが泣き出して、お母さんがベビーベッドに駆けつける。お父さんも新聞を置いてそれに付き添う。庭にしっかと根を下ろした桜の木は、枝にたっぷりと花を咲かせて、静かにそれを見守っている。
 写真を見て、慎重に木を固定する位置と角度を決める。
 こうして少しずつ完成に近付いていく瞬間が一番わくわくする。

 作業部屋のドアを開けた途端。
「わっ。なんだよ。黙って出てくるな」
 一番手前の席の高松さんが驚いて前に立ちふさがった。
 柔道部出身だという、縦にも横にも大きい高松さんが前にいたら、身動きが取れない。
 黙って出るなって言われても……。大体いつからそんなルールが?
 困惑していると、中西さんが、模型はできたか?、と問いかける声が聞こえた。
「はい。できました」
 私は大きく頷いた。今回は、今までの中でも一番の自信作だ。
「よし。こっちも準備OKだ」
 ん? プレゼンテーションの資料のこと?
 そういえばなんかこの部屋、暗いし。プレゼンの練習してたのかな。
 首を傾げる私の前から、ようやく高松さんが横歩きで動きだした。
 視界が開けた。
「ハッピーバースデイトゥユー、ハッピーバースデイトゥユー」
 中西さん、谷さん、高松さんが横に並んで、歌い出した。
 三人の前、部屋の真ん中にあるミーティングデスクの上に、大きな苺のデコレーションケーキ。
 二本のロウソクに小さな炎が揺らめいて、いつになくニコニコしている三人の頬を温かく照らしている。
 4つのグラスに、ワイン。白いお皿とシルバーのフォーク。
「ハッピバースデイ、ディア、鈴ちゃーん。ハッピーバースデイトゥユー」
「おめでとー」
 拍手の音。
「えーと」
 脳の回路が混線中ですけど。
「アホみたいに口開けてないで、早く来い。今日、誕生日なんだろ?」
 いつまでも私がぼーっとしているので、中西さんが呆れて面倒くさそうに手招きする。
 呼ばれるままに、テーブルの前に立つ私に、中西さんが優しく言った。
「せっかくの誕生日、しかも土曜なのに、ご苦労様。せめてお祝いくらいはね」
「ワインは中西さんから。なんかすごくいいものらしいわよ」と、谷さん。
「ありがとうございますー」
「早く火消せ。早く」
 既にワイングラスを左手に握りしめた高松さんが急かした。
「はいっ。では遠慮なく」
 私はその場にしゃがんで、大きく息を吸って、ふうっとロウソクの炎を吹き消した。
 再び、拍手。
「いくつだっけ?」
「えーと、二十八になりました」
「それでもまだ二十代なのね」
 少し残念そうに感想を述べた谷さんに、高松さんは、谷さんはいくつ、と訊いて見事に黙殺された。
 谷さんの正確な年齢は私も知らない。でも、いつもメイクもネイルも怠らず服のセンスもよくて、もちろん仕事もテキパキこなしている谷さんは私の一番身近な目標だ。
 乾杯をしてワインを一口飲んだ後、谷さんがケーキを切る間に、模型の仕上がりを中西さんがチェックする。
「ふーん」
 屋根をはずして家の中を厳しい眼差しで隅々まで覗き込みながら、中西さんは細かく頷いた。
 中西さんの口から極上の誉め言葉を聞いたことはない。二十代からこの個人事務所を経営し、今、四十代に入ったばかりの働き盛りの建築家は一切、妥協を許さない。
 前回作った模型では、芝の生え方が不自然だとか、壁紙が曲がっている(ほんの少し斜めだった程度)、という理由で、やり直しを命じられた。
 この反応がどのくらいのレベルに相当するのかわからなくて、私は息を詰めてその横顔を見守る。
 玄関の扉を開いて、そこからしばらく家の中を眺めた後、立ち上がった中西さんは大きく一つ頷いて、ぽんと私の背中を叩いた。
「OK。これで持っていこう」
「はー。よかったあ」
 大きく息を吐き出したら力が抜けて、思わず壁に両手をついた。
「ではここで四月の人事発表をする」
 中西さんが作業部屋から歩き出して、大きな声で言った。
 この事務所の社員はここにいる三名プラス二名の計五名だけなので、人事発表というとかなり大げさだ。
 あわてて中西さんの後についていき、次の言葉を待った。谷さんも高松さんも手を止めて中西さんの顔を不安げに見ている。
「四月から事務職の社員一名増員。谷さん、教育よろしく。斉藤さんは四月一日付けで建築模型作成担当にする。模型作成を他の設計事務所から受注することもありえるから、心して研究に励むように」
 建築模型作成担当?
 私がその言葉の意味を飲み下す間に、谷さんと高松さんがわっと歓声を上げた。
「どんな模型作ったんだよ」
 二人してケーキも包丁もそのままに、作業部屋に模型を見に駆けつける。
「よくできてるなー」
「かわいいー。この赤い三輪車」
「木馬もなかなかリアルでいいね」
 後ろから聞こえてくる声をくすぐったく感じながら、ようやく中西さんの意図がわかった。
 いつもは設計図に細かく入れられていた指示――小物や生活用品などの配置――が、今回は最低限に留められていた。三輪車も木馬もベビーベッドも、桜の木も、図面上にはなくて、写真や家族構成の情報から私が想像で加えたものだった。
 これは中西さん流の試験だったのだ。
 どこまで自分の力で模型を作り上げられるかが試されていた。そう気付いたら、今更ながらに掌に汗が染み出してきた。
「玄関のドアを開けて中を覗いた様子が、設計図のイメージ通りだった。限られた期間でここまでできれば、まあ合格点だな」
 中西さんは満足げに私に笑いかけて、グラスを傾けてワインを口にした。


photo: :::AnytimeWoman:::[PhotoMaterial]


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