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扉の向こう側 現在(2) 2006年1月4日 [小説:扉の向こう側]

 先日、偶然見たテレビ番組で、村上さんが海外小説の翻訳をして活躍していることを知った。
 去年ベストセラーになった本の翻訳者としてドキュメンタリー番組に取り上げられ、目を輝かせて本当に楽しそうにインタビューに答えていた。
 会社を辞めて、オーロラを見に行って、それから翻訳の仕事で成功する。そんな風に、私には思いも寄らない選択をぽーんとやってのけてしまう人もいる。
 今になってみれば、その村上さんとあの時話したことが全てのきっかけだったんだろうと思う。
 あれから少しずつ少しずつ、私はちゃんと自分の意志で今の生き方を選んできたのだ。三十年生きて、やっと人生の流れが見えてきたような気がする。
 私は熱い紅茶を入れて、再び日記を置いたテーブルの前に座った。
 日記は、二〇〇五年十月十三日で終わっている。
 その後二ヵ月の間に起こったことを、記録しておこう。
 いつかまたこうして過去の扉を振り返ることができるように。


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