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約束の行方 (11) [小説: 約束の行方]

気が付いたら、紺色の扉の前に立っていた。
503、という部屋の番号の下に、『山下 昌則』と父の名前が刻まれたプレートがあった。
振り返ると、見慣れたチョコレート色の柵の向こうに、夕焼けの赤いフィルタに沈む街が見下ろせた。
車の流れが絶えない駅前の道路。
角のコンビニエンスストア。友だちのお父さんが経営している小さな印刷工場。
銭湯の煙突。小学校のコンクリートの四角い建物と、校庭。
学校から、チャイムと同時に『夕焼け小焼け』のメロディが流れはじめた。
五時を知らせる音。
子どもの頃、「あれが聞こえたら帰ってきなさい」と言われていたメロディ。
シンデレラみたいだったなあ、と今思うと少しおかしく、懐かしい。

夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘が鳴る
お手手つないで 皆帰ろう
からすと一緒に 帰りましょう
(詞: 中村雨紅)


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