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約束の行方 (7) [小説: 約束の行方]

「まあ、いいや」
自分から言い出しておいて、彼女は片手をひらっと振って話題を変えた。
「ねえ、あなたに会いたいって人がいるんだけど」
「は?」
面識のない人が突然やってきて、誰かが会いたがっている、と言うのをそのまま信じる人がこの世のどこにいるんだろう。
思わず露骨に眉をひそめる。
もしかして何かの宗教の勧誘かもしれない。
私のごく当然の反応に、彼女は笑って頷いた。
「それもそっか。確かに見ず知らずの人間にこんなこと言われたってワケわかんないよね。でも、宗教の勧誘じゃないからご心配なく」
彼女の言葉をさらりと流しかけて、はっとする。
『宗教の勧誘じゃない』って言うのは、ただの偶然?
思ったことを読み取れたわけではないでしょ、いくらなんでも。
「私の口から詳しくは言えない。でも、考えて。ヒントを三つあげる」
彼女は構わず頬の横で人差し指から一本ずつ指を立てていきながら、こう続けた。
「あなたは、その人をよく知っている。少なくともついさっきまでその人のことを考えていた。そしてこれから会いに行こうとしている。……以上」
その発言はまったく突飛で、意味は不明だ。
けれども、まったく何も思い当たらない、と言えば嘘になる。


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共通テーマ:日記・雑感

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office-cafe-yuta

過去の小説も目を通させて頂きました。
すごいですね。連載するって、なかなかできませんからね。
僕もHPで小説書いてたんですが、続けるってなかなかできませんでしたから;。頑張って下さい★
by office-cafe-yuta (2005-12-15 01:22) 

小島澪

以前の分も読んでいただいたんですね。ありがとうございます。
継続は難しいですね。休み休みマイペースにやってます。
by 小島澪 (2005-12-17 00:05) 

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