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約束の行方 (5) [小説: 約束の行方]

電車の音が変わった。
顔を上げ、重たい瞼をゆっくりと開けて、確認する。
線路際に並んでいた建物の波が途切れて、多摩川の河川敷に差し掛かる。
鉄橋を渡りはじめたところだ。
太陽の今日最後の光が、一番遠いところで夜の闇と重なり合っている。
朱色と青と、まったく違う色なのに、どうしてこううまく融合していくのだろう。
不思議だ。
こんな風に一日は終わっていくんだ、とぼんやりと思う。
子どもの頃に毎日といっていいくらい見たはずなのに、もうすっかり忘れてしまっている。
もうずっと、何年も、陽の沈む瞬間を見ていなかった。
いつもこの時間は会社で仕事をしていたり、休みの日でも部屋に閉じこもっていたり、する。
私は何を見て生きてきたんだろう。
そして、どこへ行こうとしているのだろう。
その時、隣の車両からこちらへやってくる人の足音と気配に気付いた。
腰の辺りまで髪を伸ばした、華奢な印象の若い女性だった。
私の隣にふわりと腰を下ろす時、かすかに梔子の花の匂いがした。


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