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約束の行方 (4) [小説: 約束の行方]

1995年3月20日。
一月に成人式も迎えて大人になったはずのハタチの私は、まるっきり子どものままだった。
春休みを利用して自動車教習所に通っていた私は八時にベッドから這い出して出かける準備をした。
洗面所から出てきた私をキッチンから見つけた母が、
「朝ごはんできてるわよ」
と声をかけた。
振り返って母の目を見た時、昨夜の出来事を思い出した私は、思わずぷいっと目をそらして、いらない、と答えて部屋に戻った。
「希実(のぞみ)」
コートを着、バッグを持って玄関に向かうと、母が玄関で待ち構えており、私の強情さに呆れたような表情を含んで笑った。
「うるさいこと言うようだけど、何かあったら傷つくのは希実なんだから。自分を大切にしなさい」
まったく可愛げがないことに、素直にその言葉を受け止めることのできなかった私は、うるさいってわかってたら言わなきゃいいじゃん、と言い捨ててスニーカーに足を突っ込んだ。
一端の大人のつもりの私は、彼との関係について親に一言でも意見を言われることに反発を感じていた。
「今日は誕生日のお祝いするんだから、五時には帰ってきなさいね」
後ろから母が言う。
はいはい、と私は適当に返事を返して扉を開いた。
教習所の後で彼と会う約束をしてたな、と思い出しながら。
大体五時なんて、今時、小学生だって帰らないんじゃないの。


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